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はじめに

本稿では令和6(2024)年11月1日から令和7(2025)年10月31日までの間の独禁法、下請法および景品表示法にかかる判例、排除措置命令ないし措置命令・課徴金納付命令、確約認定、警告、勧告、企業結合事例の中から、重要な論点を含むものおよび注目される判断を行っているものを取り上げて、経済法分野の動きを概説する。¶001

Ⅰ 不当な取引制限・事業者団体規制

東京オリンピック・パラリンピック談合について、同刑事事件東京地判令和6・12・18(審決集71巻433頁)、同令和7・1・30(審決集71巻447頁)、同令和7・3・21(審決集71巻456頁)、東京高判令和7・5・8(裁判所Web、経済法1)、同令和7・6・3(裁判所Web)、同令和7・7・31(裁判所Web)および同令和7・10・2(裁判所Web)、ならびに、排除措置命令・課徴金納付命令令和7・6・23(公取委Web)が出された。本談合では、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会において発注業務に従事する大会準備運営第一局次長が、受注予定者の決定を行う等して関与した。また、事業者のうち電通グループが、同次長とともに受注予定者を決定していた。電通グループを除く談合参加者は、同次長・電通グループを介して、他の談合参加者の意向を認識・予測していた。また、談合実施の方法は、落札予定者のみがテストイベント計画立案等業務(業務①)の一般入札に参加し、他の者は参加しないという、競争法の分野で「bid suppression」と呼ばれる方法によっていた(OECD「公共調達における入札談合撲滅のためのガイドライン」3頁〈https://cms03.jftc.go.jp/kokusai/kaigai/oecd_images/05_guideline.pdf〉)。そして、こうして業務①を落札した者が、当該業務の対象である競技・会場におけるテストイベント実施等業務(業務②)および本大会運営等業務(業務③)についても、「特別契約」とよばれる随意契約の形で発注を受けることになっていた。上記判決および排除措置命令は、業務①・②・③が合意の範囲であり「一定の取引分野」であるとした。合意の範囲と一定の取引分野をこのように画することについて、前掲東京地判令和7・1・30および前掲東京地判令和7・3・21は、業務①の受注者がその後の業務②・③を受注することが確実に決まっていたり、この方針が事業者に連絡・認識されていたりする必要はなく、このように受注する可能性が相当、高いことを前提として、意思の連絡をしていれば十分であるとした。また、共同性を認めるために必要な意思の連絡について、この点が争点となった前掲東京地判令和6・12・18、東京地判令和6・7・11(裁判所Web)、前掲東京地判令和7・1・30、前掲東京高判令和7・5・8等は、いずれも、「事業者相互で拘束し合うことを明示して合意することまでは必要でなく、直接又は特定の者を媒介として、相互に他の事業者の入札行動等に関する行為を認識して、暗黙のうちに認容することで足りる」(下線筆者)とした上で、意思の連絡を認定した。事業活動の相互拘束については、合意がなければ自由に入札にかかる意思決定を行うことができたところ、基本合意参加者は、これにしたがって協議ないし他事業者の調整等を行うことになっており、基本合意に制約された意思決定を行うことになるから事業活動の拘束があるとした(前掲東京地判令和6・12・18、前掲東京地判令和6・7・11、前掲東京高判令和7・6・3等)。上記次長については、令和5(2023)年12月12日に東京地裁で共同正犯として有罪判決が出て確定している(審決集70巻613頁)。その後に出された上記の判決では、受注者側の事業者と従業員らに刑事罰が科された。また、公取委の課徴金納付命令では、電通グループが受注予定者を決定したことが考慮されて、同社には、令和元年改正前独禁法7条の2第8項第3号ロ(現7条の3第2項第3号ロ)に基づく課徴金の5割加算が行われた。¶002