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本書は修理する権利に関する「本邦初の本格的入門書」(本書帯)である。近年、欧米では修理する権利を重視する政策が推進され、立法化の動きもみられるのに対し、わが国では一部の専門家を除き、この問題の重要性を理解する者は多くない。その意味で、本書の出版は時宜を得たものといえよう。著者はアーロン・パーザナウスキー(Aaron Perzanowski)、ミシガン大学ロースクール教授である。¶001

本書は、まずスマホのバッテリー交換などの具体例をいくつも取り上げ、修理する自由が奪われている現実を提示し、修理する権利が我々の身近な問題であることに気づかせてくれる(1章)。著者は、修理には「経済的メリット」や「環境的メリット」に加え、人間として成長でき、コミュニティの構築が可能になるという「社会的メリット」さえあると説く(2章)。また、修理は人類にとって根源的な行為であるが、市場が成熟すると製品寿命を人工的に設定するという「計画的陳腐化」が企業戦略として行われるようになり(3章)、修理妨害を目的とする様々な企業戦略がとられてきた実態を明らかにする(4章)。法律では知的財産法(5章)、競争法(6章)および消費者保護法(7章)が中心的な役割を果たすと本書は述べる。知的財産法(以下「知財法」)との関係では、企業が修理制限を実現するために知財法を利用している実態を詳らかにする。しかし、本書は知財法が、本来的には修理行為を排除するためのものではなく、文化や産業の発達、イノベーションの促進といった公益を実現することを目的としており、そのために、フェアユース等の条文や消尽理論等の法理論が用意されている点も併せて指摘している。競争法については、修理部品に関する市場(「アフターマーケット」と呼ばれることが多い)における競争の回復・促進を通じて修理行為の実現が果たされるという基本的立場を本書は示す。消費者保護法の章では、修理に関する不正確な情報を消費者に提供することが規制される実態などを明らかにする。本書は最後に、修理の抑制を図る様々な企業戦略を理解し研究することで、修理する自由を再び取り戻すことが可能であると主張する(8章)。¶002