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Ⅰ はじめに

本稿では、家族法、親子法の観点から、石綿論文及び橋本論文の内容を中心に検討する。それら検討内容を踏まえる形で、結びに代えて、山城論文に言及することとしたい1)¶001

Ⅱ 石綿論文について

1 成年後見人の財産管理権の範囲

(1)行為能力の制限と保護機関の権限(法定代理権)の捉え方

石綿論文では、まず、成年後見人の財産管理における権限の範囲について検討されていた。本人の行為能力が制限されていることと、それに伴い保護機関に権限が付与されていることとの関係については、大きく分けて、次の二つの見方があると整理できる2)。第一は、本人において制限された行為能力を、保護機関の意思によって補充するという点において、保護機関の権限を法定代理人の意思そのものを中心に捉える見方である。こうした見方は、権利意思説に親和的であると言える。また、たとえば我妻栄が、親権者の包括的な裁量権を「子の『人格の全面的な同一化』」と表現するのは、こうした発想に親和的であるようにも思われる3)。第二は、保護機関の権限を「本人の利益のために」という権限の付与の目的をもって捉える見方である。この見方においては、利益帰属主体ないし利益享受主体としての本人と、権利を行使する財産管理人・法定代理人が区別され、法定代理人は本人の利益のためという目的に拘束されることになる。さらに、この見方は、「本人の利益」の意味内容・基準の捉え方によって、次の二つに分けられる。一つは、他人の財産管理という観点を強調し、本人の利益とは、客観的な財産的価値の維持・実現を意味するとの考え方である。これによれば、本人の財産を減少させる贈与は、財産管理権者の権限には含まれない4)。これに対して、「本人の利益」の捉え方について、本人がそう行使したであろうという、本人の意思を基準とする発想がある。¶002