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このたび、国税不服審判所の最新裁決例を簡潔に紹介し、法律実務に役立つポイントをわかりやすく示す記事を、気鋭の実務家を執筆陣として、有斐閣Onlineに掲載することになりました。¶001

国税不服審判所は毎年3000件近い裁決を下しており、その中でも重要なものが定期的に公表されています。それらを見ると、判断それ自体もさることながら、実務家が日々の仕事をする上で、「どこに気をつけていれば事前にその問題を避けることができたか」がわかることが少なくありません(事前《ex ante》の視点)。そのような視点で、最新の裁決例が示す租税法上の問題を知ることは、租税法務の実務家にとっては勿論のこと、必ずしも租税法を専門とはしない一般民事や一般企業法務の実務家にとっても、重要なことと考えます。なぜなら、およそ全ての私法上の取引には租税が関係するからです。そこで、事前《ex ante》の視点に焦点を当てた連載には十分な意味があり、とりわけ若手・中堅の実務家の読者の需要が高いのではないかと考えました。¶002

実務にとっての重要性だけではありません。かつて法科大学院が開設された時期のことですが、私たちの一人は、教育研究における審判所裁決の意義として、①基本問題についての具体的素材の提供、②租税法の形成におけるアクターとしての役割、③新しい問題についての有権的判断の提示、の3点がある旨を指摘しました(増井良啓「教育研究の現場から見た審判所裁決の意義」国税不服審判所編・国税不服審判所の現状と展望93頁)。その後20年が経過し、裁決で取り上げられる事件には、教育研究の観点からも興味深い論点を含むものが増加しています。¶003

本連載が、少しでも実務に役立ち、ひいては教育研究にとっても有益なものになることを期待する次第です。¶004