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執筆時(2025年3月下旬)において、同性婚またはこれに相当する公証制度が存在していないことを憲法違反とする下級審判決がいくつか積み重なっており、本判決はその一つである。違憲であるという主張を根拠づけうる候補としては、憲法13条、憲法14条1項、憲法24条があり、どの条項に依拠するかは判決によって異なる。

違憲論にとって多少なりとも桎梏になるのは、憲法24条1項が婚姻の自由を規定するにあたって「両性」「夫婦」という語を用いていることである。これにより同性婚の法制化が禁止されるわけではないという論理をとったとしても、そのように規定する同じ憲法が、同性婚やそれに類する法制度の導入を要請しているという結論をとるためには、(少なくとも修辞上は)一定の工夫が必要となる。本判決が下されるまでの地裁判決において比較的支持を得ていたのは、憲法24条1項の内在的論理(文言・原意)には一定の重みを置きつつ、同条2項のもと、憲法上直接保障された権利とまではいえない人格的利益や実質的平等をも加味した国会の立法裁量とその統制という図式(本書Ⅰ-28事件を参照)に依拠し、社会の変化や諸外国の動向などを最大限に援用することで、違憲(名古屋地判令和5・5・30〔平31(ワ)597号〕)もしくは違憲状態(東京地判令和4・11・30判時2547号45頁、福岡地判令和5・6・8〔令元(ワ)2827号等〕、東京地判令和6・3・14判タ1533号189頁)という結論を導くアプローチであった(他方で憲法14条1項による突破を行ったのが札幌地判令和3・3・17判時2487号3頁。なお上述の名古屋地判は、同条項も援用する)。

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