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事実

訴外甲社は、仙台市に本店を置き、薬局の経営、医薬品の製造及び販売を目的とする株式会社であり、財産評価基本通達(以下「評価通達」)178にいう「大会社」に該当する。また、発行済み株式の全てが譲渡制限株式であり、「取引相場のない株式」(評価通達168)である。¶001

平成26年5月、甲社代表取締役であった訴外Aは、訴外乙社との間で、甲社株式の譲渡に向けた協議を行うことについての基本合意(以下「本件基本合意」)を締結した。本件基本合意において、Aは、甲社株式の全てを取りまとめて1株当たり10万5068円(以下「譲渡予定価格」)で乙に譲渡することとされた。もっとも、本件基本合意は、株式譲渡契約の締結及び譲渡予定価格について、法的拘束力を有しないとしていた。同年6月上旬、甲社を対象とするDD(デュー・ディリジェンス〔買収監査〕)が法務・財務の両面で実施されたが、同月11日、Aは死亡した。甲社取締役会は、Aの妻である訴外Bが代表取締役となり、甲社株式の売却に係るプロセスを進めることを決定した。その後、乙社は法務・財務DDの報告書を受領した。同年7月8日、遺産分割協議によりAの相続人であるXら(原告・被控訴人)は、Bとともに、Aの保有に係る甲社株式(以下「本件相続株式」)を取得し、同日、Bは、甲社株式の全てを一旦買い集めた上で、乙社との間で当該株式の譲渡契約(売却価格は譲渡予定価格と同額)を締結した。同月14日、当該契約は実行された。¶002