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事実

X(原告・控訴人=被控訴人)は、後にY(被告・被控訴人=控訴人。映画「天上の花」〔以下「本件映画」という〕の最終脚本の作成に携わった著名な映画脚本家)により加筆、修正されて本件映画の脚本とされた第12稿の原案である第10稿を作成した著作者であり、本件映画のクレジット表記においてYとともに脚本家と表示されている。本件は、Xが作成した第10稿を、Yが、Xに無断でその内容を改変して第12稿を作成し、Xが有する第10稿についての同一性保持権を侵害したと主張して、Xが、Yに対し、不法行為に基づく損害賠償の支払、著作権法115条に基づく名誉回復措置、同一性保持権に基づき第10稿を変更して作成された第12稿を脚本として制作された本件映画の上映等の差止めを求めた事案である(なお、Xは、併せて、本件映画の映画監督A、本件映画の制作プロダクション及び本件映画の配給会社をYの共同被告として本件訴訟を提起していたが、原審における口頭弁論終結後、上記3者と和解し、Yに対する本件映画の上映等の差止めに係る訴えを取り下げた)。原審(大阪地判令和6・5・30裁判所Web〔令和5年(ワ)第531号〕、小泉直樹〔判批〕ジュリ1603号〔2024年〕8頁)は、Yによる第10稿から第12稿への変更のうちXが同一性保持権侵害と考える変更箇所がXの同一性保持権を侵害に当たると認めて、不法行為に基づき慰謝料5万円及び弁護士費用5000円並びにこれらに対する遅延損害金の支払を求める限度で理由があるとして認容し、その余を棄却した。これに対し、Yは、敗訴部分、Xは、損害賠償請求についての敗訴部分についてそれぞれ控訴を提起した。¶001