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Ⅰ はじめに

近年、わが国の公益通報者保護法の改正を要請する国際的な高まりがみられる。例えば、2019年に公表されたOECD贈賄作業部会(WGB)の第4期対日審査報告書では、「外国公務員贈賄の探知に関する勧告」として、①公益通報者保護法における保護対象者の拡大、②外国公務員贈賄に関する公益通報者保護のため公益通報者保護法違反(不利益取扱い)の企業に対する刑事罰・行政上の制裁の追加、及び公益通報者が不利益取扱いを受けた際の立証責任の転換が求められた1)。また、同年のG20大阪サミットにおいても「効果的な公益通報者保護のためのG20ハイレベル原則」が承認され2)、これは議長国たる日本の優先課題であることが示された。さらに、2023年7月24日~8月4日に来日した国連の「ビジネスと人権の作業部会」の最終調査報告書では、ビジネスと人権を巡る日本の取組に対して、日本の公益通報者保護法の改善の遅れが指摘され「自営業者、請負業者、供給業者、労働者の家族及び弁護士への法の適用、内部告発者に報復する企業への制裁の確立、内部告発者への金銭的インセンティブまたは同様の報奨制度の提供など、内部告発者保護をさらに強化すべき」という厳しい提言が示された(同報告書85(g)(ⅵ))3)¶001