事実
Ⅰ
原告X社は、訴外株式会社Aホールディングス(以下「HD」という)の完全子会社であり、HDを頂点とするAグループ各社の営業部門等のサポートを行っている。被告Yは、平成18年から同26年までX社の唯一の取締役かつ代表取締役であった者である。¶001
Ⅱ
X社の従業員である訴外Bは、平成22年8月頃から、小売店舗の商品陳列棚を隠し撮りカメラで撮影し、その画像をマーケティング上有効なデータに加工して顧客に販売する事業(以下「本件事業」という)の検討をYと相談の上進めていた。同年11月頃、Bは本件事業をAグループ社内ベンチャー事業選考に応募したが、翌年1月、A社の総務部法務担当部長から、無断撮影の違法性及びAグループと小売業者との信頼関係を破壊するリスクを指摘された。同月21日頃にY等の指示で取得された法律意見書には、本件事業の違法性につき、店舗内での撮影禁止が明示されている小売店舗に関して本件事業を行うことは民事刑事の両面で法的リスクが高く、明示されていない場合も法的リスクが完全になくなるわけではない旨が示されていた。Bは、それぞれ別の弁護士による2通の法律意見書をさらに取得したが、いずれも同様に違法となる場合があることを指摘するものであった。同年6月頃、HD代表取締役社長訴外Cは、Yに対して、小売業者と大きなトラブルになる可能性がある、撮影を別会社がしてもいずれAグループとのつながりがわかってしまう等と指摘し、本件事業に強く反対した。¶002