事実
Y1株式会社(被告)は自動車及び関連部品等の製造・販売等を業とする非公開会社である。Y2有限公司(被告)とX有限公司(原告)はともにY1社の株主で、Y2公司は香港証券取引所上場法人である。Y1社とその全株主等との間で締結された契約(本件契約)では、他の株主の株式売却時に、一定の比率で自らの保有株式の譲渡を要求できる権利(共同売却権)が定められていた(ただし、詳細は不明)。¶001
平成29年5月23日頃、Y1社は株主に対し、Y2公司によるY1社の買収(本件買収)の計画、具体的には、一段階目の取引としてY2公司の株式及び金銭とY1社株式との任意交換(本件譲渡)を行い、二段階目の取引として本件譲渡に応じなかった株主のスクイーズアウト(SO)を行う計画を記載した提案書を送付した。本件譲渡の対価は、Y1社の株価を36万4700円とした上で、Y2公司の株式7割、金銭3割のパッケージとするとされた。同年6月13日、Y1社はX公司に本件譲渡への応否の意向を尋ねる電子メールを送付し、さらに同月28日、X公司が本件譲渡に応じない選択をしたことを前提に、①共同売却権の不行使及び本件譲渡完了時の本件契約の解除と、②本件譲渡の完了後に1株当たり36万4700円で実施予定のSOの手続への協力に同意する旨の同意書への署名を求める電子メールを送付した。同メールには、②は「同じ株価……でのSO実施をお約束するために」記載した旨が書かれていた。もっとも、以上の一連の提案書やメールにはSOを確実に実施する旨の記載はなく、また、同意書にはSOの実施を条件としてX公司が権利を放棄する旨の記載はなかった。同年7月18日、X公司は同意書に署名してY1社に交付した。¶002