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Ⅰ 最高裁判決

1 職種限定労働者に対する配転命令の違法性

滋賀県社会福祉協議会事件(最判令和6・4・26労判1308号5頁、労働法7)は、職種・業務内容を福祉用具の改造・製作・技術開発に係る技術職に限定する旨の労働契約上の合意がある労働者に対して使用者が行った総務課施設管理担当への配転命令につき、「労働者と使用者との間に当該労働者の職種や業務内容を特定のものに限定する旨の合意がある場合には、使用者は、当該労働者に対し、その個別的同意なしに当該合意に反する配置転換を命ずる権限を有しないと解される」ところ、本件では、労使間において労働者の職種・業務内容を前記技術職に限定する合意があったのであるから、会社は、従業員の同意を得ることなく総務課施設管理への配転を命ずる権限をそもそも有していなかったと判断し、職種限定の合意を認定しながら一方的配転命令を肯定した原審を破棄し差し戻している。配転に関する労使間合意の意義を重視する判断として適切であり、労契法の基本原則である合意原則(労契3条1項・8条)を確認し促進する意義を有するものと解される。¶001