わが国の戦後の社会経済を支えた「日本型雇用システム」(本書の表現では、「日本的雇用システム」)に動揺が生じていることは、近時の学界において広く共有されつつある重大な関心事である(たとえば、池田悠ほか「〔特集〕岐路に立つ日本型雇用システム──人生保障から権利保障への転換の流れを考える」法時95巻2号〔2023年〕4頁以下)。本書は、その「日本的雇用を問い直す」という大テーマの下、(イ)日本的雇用システムを構成する雇用慣行の功罪、(ロ)日本的雇用システムを下支えする判例法理の再検討、(ハ)労働市場の変化やデジタル化などの雇用環境をめぐる外的変化への対応を三本柱の視角として設定し、1年半にわたって法律時報に連載された大型企画を取り纏めた書籍である。¶001