事実
Y(製薬事業等を行う米国法人。債務者)及び申立外A社は、Y製品(【効能又は効果】中心窩下脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性等)を共同開発し、Yの関連会社である申立外B社は、平成24年11月、Y製品の販売を開始した。平成27年12月10日、Yは本件特許の出願をした。本件特許の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下「本件発明」という)は、湿潤加齢黄斑変性症(wAMD)の特定患者群の治療における使用のための医薬組成物に関する。令和5年5月31日、X(製薬事業等を行う韓国法人。債権者)製品の日本における製造販売業者である申立外C社は、厚生労働大臣に対し、薬機法14条1項に基づき、Y製品のバイオ後続品(国内で既に新有効成分含有医薬品として承認されたバイオテクノロジー応用医薬品と同等・同質の品質、安全性、有効性を有する医薬品として、異なる製造販売業者により開発される医薬品)として、X製品の製造販売の承認申請(以下「本件承認申請」という)をした。C社が本件承認申請に当たり提出したX製品の添付文書案には、【効能又は効果】として、「中心窩下脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性」(本件特許におけるwAMDに相当する)等の記載がある。Yは、令和5年7月27日、本件特許の設定登録を受けた。X、C社及び厚生労働省は、同年9月21日、本件承認申請に関する会議を開いた。同年11月9日、C社は、厚労省の指摘を踏まえて適応症からwAMDを削除し(いわゆる「虫食い」)、令和6年6月24日、適応症を網膜静脈閉塞症に伴う黄斑浮腫等とする内容でX製品の製造販売の承認を受けた。Xは、上記会議の際に厚労省から言及があったYの見解の内容について厚労省に確認したところ、厚労省の担当者は、令和5年12月27日、C社に対し、先発医薬品メーカー側の回答(以下、Yによる厚労省等に対する一連の情報提供行為を「本件告知」という)として、X製品を製造販売する行為が本件特許権を侵害する旨の情報提供があった旨をメールで返答した。本件は、Xが、本件告知は不正競争防止法(以下「不競法」という)2条1項21号所定の信用毀損行為に当たるとして、差止めの仮処分を求めた事案である。¶001