本書は、租税法学・財政法学の泰斗、中里実東京大学名誉教授の古稀記念論集である。「租税法の基礎理論」「租税法の実践的展開」「租税法と公法」「租税法とビジネスロー」の4編で構成される本書は、故金子宏東京大学名誉教授の学問を継承し、公法のみならず私法やビジネスローとの接点を強調しつつ、理論を基礎に実践をも重視された中里名誉教授の学問を反映したものとなっている。以下、その一端を紹介するが、紙幅ゆえに論攷の挙示が網羅的でないことをご寛恕いただきたい。¶001
有斐閣
2024年8月刊
A5判・976頁
本体2万1000円+税
ISBN 978-4-641-22861-0
■租税法の基礎理論
最小国家における租税と貨幣:渡辺智之
所得の発生と通貨:藤岡祐治
所得と自由──ベルクソンからフィッシャーへ:岡村忠生
租税法と経済学と神経科学──Law, Economics and Neuroscience:神山弘行
準自発的コンプライアンスについて:増井良啓
制定法解釈における議会議事録の参照──イギリスのPepper v. Hart判決の分析:吉村典久
経営判断原則と租税法判断──租税回避否認要件に係る経済的合理性基準の研究:谷口勢津夫
租税法が企業の価格決定に介入することの限界について:藤原健太郎
Andreas Kallergis『課税管轄権』を読む:田中啓之
外国子会社合算税制(タックス・ヘイブン対策税制)の趣旨とその解釈のあり方:長戸貴之
政府系ファンドへの課税問題──国際法の観点から:中谷和弘
■租税法の実践的展開
信託型ストック・オプションに関する租税法上の解釈問題:渡辺徹也
受益証券発行信託型STO・PTS取引に対する適正な課税方法──特に不動産セキュリティ・トークンを素材として:岩﨑政明
租税属性の移転可能性をめぐる議論──税額控除の給付・移転の広がりを素材に:吉村政穂
企業ファイナンスへの課税の影響Ⅱ:橋本慎一朗
資産評価の文脈──国際課税と消費型所得概念を視野に入れつつ:浅妻章如
租税法上の行政制裁の現状と展望:佐藤英明
租税法における後発的事由:渋谷雅弘
執行可能な税制──構造的執行欠缺理論を手がかりに:巽 智彦
国税犯則調査の性質──犯則調査は法体系上の「夾雑物」あるいは「鵺」か:笹倉宏紀
■租税法と公法
ジャン・ボダンの主権論に関する覚書:長谷部恭男
準死について──人に関する研究ノート:小島慎司
納税の義務:石川健治
スタンリー・サリーと日本における行政法の変容──理由附記法理の「原意」をめぐって:渕 圭吾
国立大学法人の組織法──国際卓越研究大学の制度を契機として:山本隆司
パテント・リンケージをめぐる行政法上の問題点──医薬品承認制度と特許権保護の交錯:興津征雄
国家の経済活動関与と租税国家──近代日本からの考察一斑:齋藤 誠
年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)による積立金運用と法規定:太田匡彦
租税国家原理とは何か──その来歴とゆくえ:田尾亮介
財政法学の体系に関する試論──特に租税法との関係を念頭において:藤谷武史
公益法人と信託──実体法と税法の交錯:溜箭将之
■租税法とビジネスロー
ペイレシオ開示の目的とあり方について:松井智予
米国におけるスタートアップ企業の組織形態選択と課税:星 明男
不正競争防止法における品質等誤認惹起行為:白石忠志
2023年企業結合ガイドラインにみるバイデン政権下の反トラスト政策:滝澤紗矢子
知的生産活動における「資源管理」と法──学際的な議論に向けた準備作業:小島 立
商標権の譲渡をめぐる問題──知的財産権取引と課税の議論の前提として:渕 麻依子
古稀をお祝いして
J. Mark Ramseyer/真砂 靖/古谷一之
中里実先生略歴/中里実先生著作目録
本書は、租税法学・財政法学の泰斗、中里実東京大学名誉教授の古稀記念論集である。「租税法の基礎理論」「租税法の実践的展開」「租税法と公法」「租税法とビジネスロー」の4編で構成される本書は、故金子宏東京大学名誉教授の学問を継承し、公法のみならず私法やビジネスローとの接点を強調しつつ、理論を基礎に実践をも重視された中里名誉教授の学問を反映したものとなっている。以下、その一端を紹介するが、紙幅ゆえに論攷の挙示が網羅的でないことをご寛恕いただきたい。¶001