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Ⅰ 知的財産法によるデータの法的保護

1 データの性質と知的財産法による保護

Q1

データは、知的財産法で保護されるでしょうか?

¶001

A1

データは重要な知的財産ですが、データが知的財産法で保護されるのは、営業秘密や限定提供データとして不正競争防止法で保護される場合、又は、データベースの著作物や編集著作物として著作権法で保護される場合等のごく限定された場合だけです。

¶002

データは重要な知的財産ですが、データが知的財産法で保護されるのは、営業秘密や限定提供データとして不正競争防止法で保護される場合、又は、データベースの著作物や編集著作物として著作権法で保護される場合等のごく限定された場合だけです。¶003

知的財産とは、一般に、財産的価値のある情報であるとされます。IT(情報通信技術)やAI(人工知能)が進歩した現代においては、データは、ITやAIで分析等をすることによって大きな価値を生み出す知的財産であるといえます。知的財産戦略本部の検討会による「知財・無形資産ガバナンスガイドライン」も、企業が活用すべき知財・無形資産のスコープを「特許権、商標権、意匠権、著作権といった知財権に限られず、技術、ブランド、デザイン、コンテンツ、ソフトウエア、データ、ノウハウ、顧客ネットワーク、信頼・レピュテーション、バリューチェーン、サプライチェーン、これらを生み出す組織能力・プロセスなど、幅広い知財・無形資産を含む」としており、データを知財・無形資産の中に位置付けています。¶004

「知財・無形資産ガバナンスガイドライン」における「知財・無形資産」のスコープ
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知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会「知財・無形資産ガバナンスガイドライン Ver. 2.0」15頁を基に作成。

データの定義は様々あり得ますが、例えば、OECDのEASD勧告(Recommendation of the Council on Enhancing Access to and Sharing of Data)は、データを、構造化又は非構造化フォーマットで記録された情報であり、テキスト、画像、音声、動画を含む、と定義しています。¶005

もっとも、どのような定義を採用したとしても、データは、技術的思想の創作ではありませんので、特許法では保護されません(特許2条1項)。また、個別のデータは、通常、思想又は感情を創作的に表現したものではありません(著作2条1項1号)ので、データの集合体がデータベースの著作物(同12条の2第1項)や編集著作物(同12条1項)として保護される場合を除いては、著作権法でも保護されません。¶006

もちろん、データに登録済みの商標や意匠が含まれている場合には、商標権や意匠権によってデータの一部が保護される可能性があります。したがって、第三者が作成したデータを利活用する場面では、念のため、第三者の保有する著作権、意匠権又は商標権等を侵害していないかどうかを確認する必要があります。¶007