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事実の概要

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昭和7(1932)年生まれのX(原告・被控訴人)は、建設労働者などとして働いていたが、景気の悪化に伴う収入の減少により居住していたアパートの家賃を支払えず、いわゆるドヤ(簡易宿泊所)に宿泊しながら生活するようになり、平成7(1995)年春ころからは野宿もするようになった。平成8(1996)年5月、Y(大阪市立更生相談所〔以下「市更相」という〕の所長――大阪市長から、環境改善地区〔いわゆる釜ヶ崎地区ないしあいりん地区〕における住居のない要保護者に係る生活保護事務の委任を受けた保護実施機関――被告・控訴人)は、Xからの保護開始申請に基づき、A一時保護所(市更相の付属施設)での収容保護を決定した。Yは同年6月、B更生施設での収容保護への変更決定をしたが、同年12月にXがBを退寮したため保護廃止した。平成9(1997)年1月にXは再びYに保護申請をし、YはA一時保護所に収容保護決定ののち、同年3月にC保護施設に転寮させる保護変更決定をしたが、8月にXがCを退寮したため保護廃止した。¶001