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事実の概要

(1)

X(原告・被控訴人)は複数の事業所において勤務し、厚生年金保険(以下「厚年」という)の被保険者資格を取得し、3つの記号番号を有していた。Xは勤務中の事故で負傷し、旧厚年法(昭和60年改正前のもの)に基づく障害厚生年金の裁定を請求した。このとき、障害厚生年金裁定請求書にはすべての職歴を記入するよう注記されていたが、Xは最後に勤務した事業所の職歴と年金番号のみを記入した。社会保険庁は昭和52年5月、昭和50年10月から障害厚生年金を支給する旨の裁定(以下「前裁定」という)をした。前裁定では、社会保険庁は、Xの全被保険者期間でなく、直近の被保険者期間のみの標準報酬月額を基礎にしたために誤って本来よりも高い額で年金額を計算していた。昭和53年ごろ、Xは他の記号番号にかかる厚生年金の被保険者期間について大津社会保険事務所に照会し回答を受ける機会があったが、上記の誤りについて特に指摘を受けなかった。¶001