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事実の概要

X(原告)は昭和55年3月27日から印材の販売を目的とする会社である株式会社Y1(被告)の従業員であったが、Xは、同年4月5日営業先からY1へ帰る途中、名古屋駅のプラットホームから中廊下に降りる階段で、階段の側壁に頭部を打つか転倒するかして頭部を打撲し脳震盪様の症状を起こした。同月7日に中部労災病院で診察を受け、同日から同月28日までY1を休業した。¶001

Y1は同年4月28日、30日に手形が不渡りとなり、実質的には4月29日に倒産した。Xは28日まで休業しており、Y1から何の連絡もなかったため、Y1の倒産を事実上知らなかった。X以外の従業員全員はそのころY1を退職した。同年6月5日Y1の代表取締役からA社会保険事務所長に対し、Xを含む従業員全員について健康保険被保険者資格喪失届が出され、同所長は調査の結果同年4月29日に、Y1は倒産したものと判断し、同月30日をもってXは上記資格を喪失した旨確認し、同年6月9日、Xに対し、「会社廃止のため」と附記して健康保険者証の返納を求める通知を発した。同通知は同月11日Xに到達した。¶002