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Ⅰ はじめに

子の引渡しの強制執行に関しては、令和元年改正法1)が非常に重要な転換点となった2)¶001

それまで、日本国内における子の引渡しの強制執行事件(以下、「国内事案」という)に関しては、監護親が非監護親に対して子の監護に関する処分としての家庭裁判所の審判(民766条、家事39条・別表第2第3項)または審判前の保全処分(家事105条)として子の引渡しを命ずる旨の裁判が言い渡された場合でも、強制執行の方法について明文の規定が存在していなかった。そのため、どのような強制執行の方法が許されるかについて、見解が対立していた。ただし、実務上は、債権者の選択により、間接強制(民事執行法〔以下、「民執法」という〕172条)の他に、動産の引渡しの強制執行(同法169条)を類推適用して執行官が債務者から子を取り上げて債権者に引き渡す方法によるという運用が、次第に定着していった3)¶002