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はじめに

本稿は、労働市場流動化というテーマの中で退職金課税を扱う。本稿が扱う「退職金」には、退職時に一括で受け取る退職一時金に加え、年金形式で受け取る企業年金が含まれる1)。この2つは、受取り方が異なるものの、元の雇用主から退職時・退職後に受け取る金銭であって、給与の後払いという性質をもつ。本稿では、まず、従来の退職所得および企業年金に係る課税制度の概要を説明し、その問題点を指摘する()。その後、指摘した問題点に関する社会の現状として、転職・非正規雇用と退職給付の実態、年金課税の改正と年金の位置づけの変化を分析し、それぞれの問題点に対応する近年の改正と、なお不十分な点を挙げる()。そして、今後の社会にとってよりよい退職金課税について検討し、残る問題に対応するために現在提案されている制度に言及する()。¶001