事実
原告Xは、被告Yの従業員の勧誘を受け、平成27年4月にYから額面金額20万ドルのノックイン条項付他社株償還可能債(以下、「本件EB債」という)を購入した。本件EB債についてノックインが発生した場合、償還日に参照銘柄のうち最も株価の下落率の大きい銘柄の株式および調整金が償還される。Xは、本件EB債購入時78歳であり、月額約26万円の年金、約6000万円の金融資産その他居住用建物を有していた。Xは、国内外株式や投資信託に係る投資経験を数多く有し、かつ平成26年に本件EB債と同様な仕組みを持つEB債の取引を行った。もっとも、デリバティブ取引を行ったことはなかった。Yは、有価証券の売買やデリバティブ取引等を目的とする株式会社である。Yの使用人A課長は、平成27年3月30日に、Xの自宅を訪れ、Xの会話能力や内容理解力等に問題がないことを確認した。同年4月8日に、AはXに電話をかけ、本件EB債の購入を提案し、簡単な説明をした。Xは、「うーん、まぁよくわかんないね」などと返事をした。翌日、AはXに対し「外国債券の契約締結前交付書面」、「外国債券のご案内」および「ヒストリカルデータに基づく想定損失」と題する各書面等(以下、「本件EB債交付書面」という)を交付し、それに沿って説明をした。本件EB債交付書面には、償還額変動リスク等4種のリスク、想定損失が-75.86%である旨、その他基本情報が記載されていた。B支店長は、Aによる説明後、6分間程度でXに対し電話で説明をした。以上の説明に対し、Xは質問や疑問を述べなかった。¶001