事実
X(原告・控訴人)は、楽譜の出版及び販売等を目的とする株式会社であり、多数のバンドスコア(バンドミュージックについて、ボーカル、ギター、キーボード及びドラム等のパートに係る演奏情報が全て記載されている楽譜)を電子媒体及び紙媒体で出版し、実店舗に卸売しているほか、自社及び他社のウェブサイトにおいて販売している。Y1(被告・被控訴人)は、ウェブサイトの企画、制作及び運営等を目的とする株式会社であり、「GLNET+」というウェブサイト(以下「本件サイト」という)等において、多数のバンドスコアを無料で公開し、不特定多数人の用に供した上で、広告料収入を得ている。本件は、Xが、Y1において、Xが制作し販売するバンドスコアをXに無断で模倣してバンドスコアを制作しこれを本件サイトにおいて無料で公開することによって、Xが制作するバンドスコアの販売冊数の減少を招きXの営業上の利益を侵害したと主張して、Y1に対しては一般不法行為、Y1の代表取締役であるY2(被告・被控訴人)に対してはY1との共同不法行為又は会社法429条1項、Y1の元取締役Y3(被告・被控訴人)に対しては会社法429条1項にそれぞれ基づいて、損害賠償請求を行った事案である。一審(東京地判令和3・9・28 LEX/DB 25601570〔民事第4部〕。同判決については、鮑妙堃〔判批〕知的財産法政策学研究68号〔2023年〕285頁参照)は、模倣主張楽曲のいずれについても、Y1がXスコアを模倣してYスコアを制作したと認めることはできないとして、Xの請求を棄却した。X控訴。¶001