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本書は、前著『詐害行為の基礎理論』(2011年)公刊後に発表された詐害行為取消権に関する研究論文と、それと前後して(2006年以降に)発表された「財産の集合的把握」に関連する論稿から成る。¶001
序論では、新たな自由社会における法規制のあり方について、種々の実定規範の背後に「一般(的)法原則」を措定し、それを基礎に動態的かつ重層的な法規制を行うというフランス法圏に特徴的な法認識のアプローチが参考になるとの理解が示され、具体的には、フランスにおける(詐害行為取消権の背後にある)「詐害(フロード)」法理に基づく動態的な法形成が、我が国における濫用的会社分割への対応や、集合動産譲渡担保における設定者の処分権限の規律にも有用であることが指摘される。また、終章では、広く法認識論の視角から「法秩序の重層構造と動態的法形成」の検討が改めて行われ、第1巻・第2巻を通じた『詐害行為の基礎理論』の考察が締めくくられる。こうした方法論とその具体的実践は詐害行為以外の領域にも応用が可能であり、その意味で本書は、他の領域の研究者や実務家にも思考のヒントを与えてくれる。¶002