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Ⅰ 養育費・親子交流をめぐる従来の制度とその課題

1 従来の制度と課題克服への取組み

令和6年の民法等の一部を改正する法律(令和6年法律第33号)では、民事実体法のみならず、手続法の側面からの大きな改正も行われている。本稿では、手続面での改正と大きくかかわる養育費及び親子交流の問題を中心に、従来の制度と比較しつつ新しい制度を紹介する。¶001

従来の制度を概観すると、日本では裁判上の離婚のほか、父母の協議によって離婚をすることが可能であるが(民763条)、離婚の際には、子の監護をすべき者、父又は母と子との面会及びその他の交流、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項を、子の最善の利益を図って定めるものとされ、協議が調わないときには家庭裁判所が定める(民766条・771条)。これは、離婚の際に子の監護に関する取決めがなされていない場合が少なくなかったために、平成23年の民法改正で明文化されたものであるが、実際には、取決めがなされていない例や、取決めがあってもそれに従わない例が依然として多く見られた1)。そのため、養育費の支払を確実なものにすることや面会交流が安全に実施されるようにすることが求められていた。¶002