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Ⅰ 背景と問題意識

国際連合「持続的な開発目標(SDGs)」1)の設定する目標8「働きがいも経済成長も」のうち、ターゲット8-7は、強制労働、児童労働等の根絶を謳っている。また、同目標12「つくる責任、つかう責任」のうち、ターゲット12-6は、大企業や多国籍企業に持続可能性に関する情報開示等の取組を奨励することを謳っている。¶001

こうしたSDGsも背景として、欧州諸国を中心とした企業の人権尊重の取組(以下「人権尊重取組」という)に関する情報の開示や人権デュー・ディリジェンス(以下「DD」という)の実施を義務付ける法令の制定、米国における強制労働を理由とする輸入禁止法の運用・新法導入等、欧米各国ではサプライチェーン(以下「SC」という)における人権尊重を促す法制度が拡大しつつある(後述)。他方、日本は現時点で、法令でなくガイドライン(2022年9月)という形で2)、これを推進するアプローチを採用した。よって、日本では、当面、人権尊重については個々の企業による自主的な取組に依存することになると考えられ、企業が潜在的に独占禁止法(以下「独禁法」という)に違反するリスクをどう評価するかが実務的に重要な課題となる。¶002