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Ⅰ ODRの現状

ODRは多義的な概念ではあるが、一般的には、IT・AI等の先端技術を用いたオンラインでの紛争解決手続を指すものと理解されている。ADR(裁判外紛争解決手続)のオンライン版であることも多いが、後述のように、国家の裁判所におけるIT・AIの利用を含み論じられる場合もある。¶001

法的紛争の解決には、①紛争発生後に当事者が解決手段の検討・情報収集をする段階(「検討フェーズ」)、②当事者が相談機関に相談する段階(「相談フェーズ」)、③当事者同士が紛争解決に向けて任意に交渉する段階(「交渉フェーズ」)、④中立公正な調停人の関与の下で紛争解決を図るADR段階(「ADRフェーズ」)、⑤裁判所における民事訴訟による紛争解決を図る段階(「民事訴訟フェーズ」)があるとされる。ODRは、利用者によるオンラインでの情報収集や紛争解決機関への連絡・相談などが紛争解決に連続的に連なっていく。そのため、ADR機関による調停(ADRフェーズ)だけでなく、その前段階である検討フェーズ、相談フェーズも幅広く対象として含むものと捉えた上で、これらの各フェーズにおけるIT・AIを活用した法的サービスや紛争解決手続を指すものとして、そのあり方の検討を進めるべきであるとされる1)¶002