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本書は、民事手続法理論の碩学である著者が、近時における民事執行法・民事保全法・倒産法分野での研究論文を収録した研究論文集である。¶001

評者は、東京地裁の民事執行専門部に裁判官として勤務していた時代、著者の『債権執行手続の研究』(有斐閣、1994年)に接し、その中の「債権執行の手続は、第三債務者に対して、できるだけ負担をかけないように構成され、運用されなければならない」(同書3頁)との記述に実務家として深く共感し、そして、かかる第三債務者保護の観点を債権執行の諸論点の解決に生かそうとする姿勢に深く感銘を受けたことを記憶している。債権執行における第三債務者保護の観点は、現在では債権執行手続における通奏低音として確固たる地位を占めているといってよいが、これを広汎な外国法研究などを基礎にいち早く指摘した著者は、「学問的先駆者」と呼ぶに相応しい存在である。そこで、本書評では、かかる「学問的先駆者」という観点から、いくつかの論稿を採り上げて紹介することとしたい。¶002