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本書のタイトルは実に強烈である。著者の友利氏は「著述家」として、知財の分野で既に他にも多くのユニークな著作を世に出されているが、その中でも「商標ヤクザ」「商標ゴロ」等のフレーズまで帯に並ぶ本書が、兄弟書である『エセ著作権事件簿』とともに法律書コーナーで異彩を放つ存在であることは疑いようもない。¶001

さらにページを開けば、そこにも教科書的な解説とは無縁の世界が広がっている。¶002

タイトルどおり、本書の中では「商標権」を行使しようとする「権利者」がもたらした警告事案から侵害訴訟まで実に56にもわたる紛争事案(不正競争防止法や著作権法を根拠に権利主張がなされた事例も織り交ぜられているが、多くは一見すると違和感のない標章等の使用に「権利者」がクレームをつけた事例、という点で共通している)が取り上げられ、それらの背景や紛争経過が、どこで見つけてきたのかと舌を巻くような詳細さをもって(だが平易にまとめられて)豊富なビジュアル資料とともに紹介されているのだが、それと併せていずれの事例にも添えられているのが、これでもかとばかりに著者が浴びせる数々の苦言、批判……である。節々に読者を和ませようとするユーモアは感じられるものの、著者自身が「盛大なカン違いや独占欲の発露」と総括しているだけあって、「権利者」に向けられる目は徹頭徹尾厳しい。¶003