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Ⅰ 漁業法のTAC(Total Allowable Catch:漁獲可能量)制度の位置付け

1 アジェンダと漁獲制限の関係

「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」(以下「アジェンダ」という)1)は、農業・漁業の視点でみると、飢餓・貧困に終止符を打ち、持続可能な消費及び生産、天然資源の持続可能な管理に関する緊急の行動をとることという大きな目標を持つ(同前文「人間」及び「地球」)。アジェンダは、2020年までに漁獲を効果的に規制し、過剰漁業や違法・無報告・無規制漁業及び破壊的な漁業慣行を終了し、科学的な管理計画を実施する必要性に言及する(同目標14.4)。また、2022年6月17日、WTO閣僚会議にて漁業補助金協定(Agreement on Fisheries Subsidies)が合意され、違法・無報告・無規制の漁業及び乱獲状態の資源に対する漁業への補助金禁止(同協定3.1及び4.1)を定め、日本も2023年7月3日にこれを批准した2)。本稿では特にアジェンダとの関連性が強い漁業法の「天然資源の持続的管理」としての側面及び資源管理システムに絞って紹介し、その上で漁業協同組合(以下「漁協」という)間の任意協定を中心とする資源管理協定の独占禁止法上の正当化事由を検討する(以下、法律の明記のない条文は、漁業法を示す)。¶001