Ⅰ 1999年(平成11年)
1 前史
「大学通り」1)沿いに面する本件土地は、1996年(平成8年)に住居地域から第2種中高層住居専用地域に指定替えされていたが、住居地域とされていたときから一貫して本件土地に建築物の高さの制限は課されていなかった。¶001
1998年(平成10年)には、国立市都市景観形成条例2)が施行され、1999年(平成11年)には、景観保護を訴える市長が当時の市長を破って当選するなど、景観保護の機運が高まっていた。¶002
大学通り沿いの土地(本件土地)を本件建物の建築主となる不動産開発・販売等業者(本件業者)が購入し、本件土地に高層マンション(本件建物)を建築するために、前年に施行されていた「国立市都市景観形成条例」等に基づく手続を開始した。同条例に基づく国立市長の指導を受け、本件業者は、計画を見直して建物の高さを低くするなどした上で、東京都建築主事に対して建築確認を申請した。一方、これに反対する住民らの陳情を国立市議会が採択し、国立市が本件土地を含む地区について建築物の高さを制限する地区計画案の公告・縦覧を実施するなど、本件建物の建築に反対し、これを阻止しようとする動きも進められた。もっと詳しく
年明け早々、東京都建築主事は本件業者に対する建築確認を行い、これを受けて本件業者は直ちに本件建物の建築工事に着工した。その直後、周辺住民らは、本件業者らを相手取り、東京地方裁判所八王子支部に本件建物の建築工事禁止の仮処分を求める申立てを行った。国立市は、地区計画を告示した上で、2月1日、本件条例を公布し即日施行した。なお、周辺住民らの申立ては、6月6日の却下決定(東京地八王子支決平成12・6・6 LEX/DB 28071410)、抗告却下決定(東京高決平成12・12・22判時1767号43頁)により退けられた。もっと詳しく
3月29日、周辺住民らは東京地方裁判所に本件建物のうち高さ20mを超える部分の撤去と慰謝料等の支払を求める民事訴訟を提起した。5月31日、周辺住民らは東京地方裁判所に行政訴訟(2004年〔平成16年〕改正前の行政事件訴訟法3条に基づく無名〔法定外〕抗告訴訟)を提起した。12月4日、行政訴訟について、東京地方裁判所より、請求の一部を認容する旨の判決(東京地判平成13・12・4判時1791号3頁)が言い渡された。本件建物の完成を受け、12月20日、東京都建築主事は本件業者に建築基準法に基づく検査済証を交付した。もっと詳しく
2月9日、本件業者は本件建物の分譲を開始した。6月7日、行政訴訟について、東京高等裁判所より、第1審判決を変更し、訴えを却下する旨の判決(東京高判平成14・6・7判時1815号75頁)が言い渡された。12月18日、民事訴訟について、東京地方裁判所より、本件建物のうち高さ20mを超える部分の撤去を命じる旨の判決(東京地判平成14・12・18判時1829号36頁)が言い渡された。もっと詳しく
10月27日、民事訴訟について、東京高等裁判所より、第1審判決を取り消し、請求を棄却する旨の判決(東京高判平成16・10・27判時1877号40頁)が言い渡された。もっと詳しく
6月23日、行政訴訟について、最高裁判所第一小法廷決定(最決平成17・6・23判例集未登載)によって終結した。
3月30日、民事訴訟について、最高裁判所第一小法廷により、上告を棄却する旨の判決(最判平成18・3・30民集60巻3号948頁)が言い渡された。もっと詳しく
「大学通り」1)沿いに面する本件土地は、1996年(平成8年)に住居地域から第2種中高層住居専用地域に指定替えされていたが、住居地域とされていたときから一貫して本件土地に建築物の高さの制限は課されていなかった。¶001
1998年(平成10年)には、国立市都市景観形成条例2)が施行され、1999年(平成11年)には、景観保護を訴える市長が当時の市長を破って当選するなど、景観保護の機運が高まっていた。¶002