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Ⅰ はじめに

本稿では、「成年後見制度の在り方に関する研究会」が、令和6年2月に公表した報告書(以下「報告書」という)のうち、行為能力制度の見直しの方向について検討を加える。取り上げるのは、制限行為能力者のした法律行為の取消しの規律と、制限行為能力者のための法定代理の規律である。¶001

報告書では、取消しに関しては「本人の判断能力の程度を考慮して、本人がした法律行為を取り消すことができる権限を認める制度に関しては、本人の請求又は同意などがある場合に法律行為を取り消すことができる権限を認めることを可能とする規律を設けることが考えられるとの意見があることを踏まえつつ、引き続き検討することとすべき」としており1)、法定代理に関しては、「本人の判断能力の程度を考慮して代理権を認める制度に関しては、本人の同意等があるなどの場合に代理権を付与することを可能とする規律を設けることが考えられるとの意見に加え、本人の積極的な同意等が認められない場合にも代理権の付与が必要なときがあるのではないかとの意見があること(これらの意見の中には取消権の付与と規律を異にすることもあり得るとの考え方があること)にも留意しながら、引き続き検討することとすべき」としている2)¶002