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はじめに
成年後見制度の在り方に関する研究会(以下、「研究会」)では、法定後見制度の全面的な見直しを視野に収めた議論が行われ、相互に複雑に関連する多様な論点が提示された1)。本稿では、制度の基本枠組みである現行三類型(後見・保佐・補助)の見直しの方向性に焦点を当てて、私見2)の立場から整理を行う。¶001
Ⅰ 改正議論の背景
今回の改正議論は、第二期成年後見制度利用促進基本計画3)(以下、「第二期計画」)と障害者の権利に関する条約(以下、「条約」)の2つを背景に持つ。前者の要請は後者の適正な国内的実施の要素を含むため、両者が求める改正の理念的な方向性には重なる部分も多い。もっとも、「代行決定による支援から意思決定支援への全面的なパラダイム転換」を求める国連障害者権利委員会の一般的意見1号4)を前提とした場合、代行決定の法的意味の理解しだいでは、そもそも法定後見制度は全廃すべきとのラディカルな結論にも至り得る。これに対して、第二期計画の要請は、本人の自己決定権に対する過剰介入の排除と当事者目線に立った制度の利用しやすさの担保等5)を図るための改善に主眼があり、必ずしも制度の全廃を志向するものではない。このため、制度の具体的な立案にあたっては、両者の理念的要請のすり合わせを図る必要が生じ得る6)。¶002