FONT SIZE
S
M
L

本件の被告人ら(Xほか3名)は、強盗殺人罪の共同正犯として起訴され、第1審および控訴審において有罪判決を受けたが、上告審は、第1審および原審に現れた証拠によっては原審の是認した第1審の認定事実を肯認できないとして、控訴審判決を破棄した。第2次控訴審は、本件での有罪判決が確定している共犯者Aの供述およびXらの自白の信用性を否定して第1審判決を破棄し、さらにXらを無罪としたが、第2次上告審は、それらの供述の信用性を積極に評価すべき事情があるとして、事実誤認を理由に原判決を破棄した。第3次控訴審は、第1審判決を破棄した上でXらを有罪としたが、第3次上告審は、原判決の事実認定には不合理な点があるとして破棄し、自判して無罪を言い渡した。その際、先行する破棄判決の拘束力(内容の異なる判断を禁じる効力)について、職権で次のように判示した。「裁判所法4条は、『上級審の裁判所の裁判における判断は、その事件について下級審の裁判所を拘束する。』と規定し、民訴法〔にも同様の規定(325条3項2文)があ〕る。刑訴法にはこれに相応する法条はないが、……上告審も職権で事実認定に介入できるのであるから、条理上、上告審判決の破棄の理由とされた事実上の判断は拘束力を有するものと解すべきである。……ところで、破棄判決の拘束力は、破棄の直接の理由、すなわち原判決に対する消極的否定的判断についてのみ生ずるものであり、その消極的否定的判断を裏付ける積極的肯定的事由についての判断は、破棄の理由に対しては縁由的な関係に立つにとどまりなんらの拘束力を生ずるものではない」。

この記事は有料会員限定記事です
この記事の続きは有料会員になるとお読みいただけます。
有料会員にご登録いただくと
有斐閣Online
ロージャーナルの記事
が読み放題
記事を
お気に入り登録できる
条文や法律用語を
調べられる
会員について →