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本件の被告人は、D社の作業所において鍵6個を窃取したという窃盗罪(非親告罪)で起訴された。公判において、検察官は、当該事実につき、D社代表取締役および社員の告訴状の証拠調べを請求するとともに、器物毀棄罪(親告罪)の予備的訴因を追加した。東京地裁は、不法領得の意思が欠けるとして、予備的訴因たる器物毀棄罪を認定したうえで、訴訟条件の具備に関し、次のように判示した。

「なお、非親告罪として起訴された後にこれが親告罪と判明した場合について起訴の時点では告訴がなかった点をどう考えるべきかについて付言するに、当初から検察官が告訴がないにもかかわらず敢えてあるいはそれを見過ごして親告罪の訴因で起訴したのとは全く異なり、本件のように、訴訟の進展に伴ない訴因変更の手続等によって親告罪として審判すべき事態に至ったときは、その時点で初めて告訴が必要となったにすぎないのであるから、現行法下の訴因制度のもとでは、右時点において有効な告訴があれば訴訟条件の具備につきなんら問題はなく実体裁判をすることができると解する。」

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