Ⅰ 主な最高裁判決

石綿災害に関する国の規制権限不行使と国家賠償責任の成否ほか  

国・建設アスベスト事件(最判令和3・5・17民集75巻5号1359頁、労働法4行政法9民法7)は、労働大臣が建設現場における石綿関連疾患の発生防止のため、労働安全衛生法に基づく規制権限を行使しなかったことにつき、労働者に該当しない者も含む建設作業従事者との関係において国家賠償法1条1項の適用上違法と判断した重要判例である。判決は、労働大臣は、昭和50年10月1日には、安衛法に基づく規制権限を行使して、石綿含有建材から生ずる粉じんを吸入すると重篤な石綿関連疾患を発症する危険があることならびに石綿粉じんを発散させる作業および周囲における作業をする際には必ず適切な防じんマスクを着用する必要があることを示すよう指導監督すべきであったところ、上記の規制権限は、安衛法2条2号所定の労働者を保護するためのみならず、労働者に該当しない建設作業従事者を保護するためにも行使すべきであったにもかかわらず、同日以降、労働大臣が上記規制権限を行使しなかったことは、屋内建設現場の建設作業に従事して石綿粉じんにばく露した者のうち、上記労働者に該当しない者との関係においても、安衛法の趣旨・目的や規制権限の性質等に照らし、著しく合理性を欠くものであって、国家賠償法1条1項の適用上違法であると判断している。労働大臣の規制権限不行使について、労働者以外の者に対する国家賠償法の救済の途を開いたことの意義は大きい。