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本書は特許法の永遠のテーマである進歩性について、法学の基礎理論を踏まえて、技術的貢献説と非容易推考説の双方が進歩性の背景にあるという仮説(以下「時井仮説」)を立てて、中国、日本、米国、欧州の2800件以上の裁判例を体系的に分析し、仮説が正しいことを証明し、日本法への提言を行うものである。¶001

筆者も、かつて、日本の若干の裁判例を分析し、『裁判例から見る進歩性判断』という小著を著したことがあるが、その経験に照らせば、進歩性に関する裁判例の分析は一筋縄でできるものではない。なぜなら、個々の裁判例の内容を理解するためには、対象となっている発明を技術的観点から理解することが前提になるからである。この点に関しては、著者が実務家として長年特許訴訟に真摯に取り組んできたことが生かされているのであろう。¶002