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Ⅰ はじめに

最高裁令和5年10月25日大法廷決定(賃金と社会保障1841=1842号99頁)(以下「本決定」)は、性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律(以下「特例法」)3条1項4号所定の「生殖線がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること」(以下「内性器要件」)が憲法13条により保障される身体への侵襲を受けない自由を過剰に制約するものとして違憲と判断し、最高裁平成31年1月23日決定(判時2421号4頁)を明示的に変更した。¶001

特例法は、「生物学的には性別が明らかであるにもかかわらず、心理的にはそれとは別の性別……であるとの持続的な確信を持ち、かつ、自己を身体的及び社会的に他の性別に適合させようとする意思を有する者」(特例法2条前段。以下「性同一性障害者」1))に対し性別の取扱いの変更の審判を受けることにより法令上の性別を変更すること(以下「性別変更」)を認めた(特例法3条1項)。¶002