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Ⅰ はじめに

芸能分野は、長い間、独占禁止法から距離が置かれてきた。その理由は、文化・芸術と経済活動とは関連が薄いとの思い込みがあった、あるいは、他に関心の高い分野で山積した問題への対応に追われてきたことだけではないだろう。そもそも独占禁止法は、その制定当初から労働分野に対する法執行意識が希薄であった。十分な説明もなく、芸能分野は主体や客体の事業者性を要求する独占禁止法の対象から遠ざけられてきたといってよい1)。いずれにせよ、芸能分野における競争上の問題や市場機能の発揮について、これまでほとんど議論さえ行われてこなかった。¶001