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はじめに
近年、公権力による表現抑制の問題とは別に、企業や自治体などの表現主体が一般市民から「不適切」の指摘・批判を受け、その表現を取り下げるか否かが社会的議論となることが増えた。¶001
「キャンセルカルチャー」の「キャンセル」とは、あることを取り消すこと、中止すること、撤回することを指す言葉だが、表現について言われる場合には、ある人に差別的傾向や不適切な言動があったことを理由として、その職や社会的名誉を剝奪するよう働きかけることを意味する1)。あるいは、そうした要素のある作品の展示をやめさせたり、その作品に与えられた賞(栄誉)を剝奪するよう求めることも、ここに入る。こうしたことを公権力が行えば間違いなく憲法問題となるのだが、一般人がこうした批判・苦情を述べることは、「表現の自由」の範疇に入る。¶002