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日本国憲法は、「環境」を語らない。世界の4分の3に相当する国が、環境保護の要請を憲法に定めると言われる中、日本国憲法は、少数派に属する。しかし、時代を超えて存続する憲法は、明文の規定を持たずとも、各時代において内なる声を発するはずである。憲法学は、その規範的メッセージを聞き取ってきた。¶001

その中で、本書は、「環境」について異なる形で耳を傾ける。本書では、「“なぜ”憲法学で環境を保護すべきか」を根源的な問題意識として(序章1頁)、「先行研究とは異なり」、「憲法学と環境法学を架橋すること」を目的とする。これには、先行研究による「憲法と環境法の規範の連続性の欠如」という問題提起を受けて、「今はまだ基礎理論を模索する段階であるように思われる」点を共有する。それゆえ、原則論・権利論の構築による示唆を目指し、両法の理論と実践の先駆的なドイツ法に範を求める(以上、序章3頁)。¶002