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Ⅰ 事件の概要

X(原告・控訴人=被控訴人・上告人)は経済産業省の職員である。Xが平成16年頃から勤務している部署の執務室がある庁舎(以下「本件庁舎」)には、男女別のトイレが各階に3カ所ずつ設置されている。なお、男女共用の多目的トイレは、上記執務室がある階(以下「本件執務階」)には設置されていないが、複数の階に設置されている。¶001

Xは、生物学的な性別は男性であるが、幼少時から強い性的違和感を抱き、平成10年頃から女性ホルモンの投与を受け、同11年頃には性同一性障害である旨の医師の診断を、同22年3月頃までに血液中における男性ホルモンの量から性衝動に基づく性暴力の可能性が低いと判断される旨の医師の診断を受け、同20年頃から女性として私生活を送っていたが、健康上の理由から性別適合手術を受けていなかった。また平成23年には、名前を変更し、同年6月から職場で使用している。¶002