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本決定は、約束手形の振出人に対する請求につき、自己に便利な裁判所に管轄を生じさせるためだけに、訴訟を追行する意思のない手形裏書人への請求を併合提起した場合には、「管轄選択権の濫用」として併合請求における管轄(旧民訴法21条〔現7条〕)が否定されると判示したものである。
手形所持人X(本訴原告・相手方・被抗告人)は、振出人Y1(本訴被告・申立人・抗告人)に対する請求と第1裏書人Y2(本訴被告)および第2裏書人Y3(本訴被告)に対する請求とを併合提起した。Y1とY2に対する請求は、本来、手形の支払地で両名の住所地を管轄する盛岡地裁のみに管轄があったが、Xは、XとY3の住所地が同じ釧路地裁の管轄に属することから釧路地裁を選択し、すべての請求を併合提起した。ところが、①Xは第1回口頭弁論期日において、Y3に対する訴えを訴状の陳述もせずに取り下げた。しかも②Xは過去にも、Y1・Y2・Y3に対し釧路地裁に本訴請求と同一の請求につき訴えを提起し、同様の形で取り下げたことがあるとされている。Y1は、管轄違いを理由に盛岡地裁への移送の申立てをしたが却下されたため、即時抗告をした。札幌高裁は以下の理由により原決定を取り消し、本件訴訟を盛岡地裁に移送した。
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