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はじめに
本稿では、令和2年11月から同3年10月までに出された(または、同年11月までに判時、判タ等に掲載された)刑法の裁判例を紹介し、概観する。¶001
Ⅰ 刑法総則
1 構成要件該当性
因果関係
東京地判令和3・3・23(LEX/DB 25590706)は、被告人と交際関係にあった実母の子A(3歳)は、被告人がAの腹部に加えた強い打撃または持続した強い圧迫を与える何らかの暴行に起因する腸間膜損傷および膵頭部損傷の傷害によって失血死した(なお、腹腔内への出血について、病院におけるヘパリンナトリウムの投与や相当量の輸液および輸血の措置が影響しているとしても、それらの措置は被害者の治療目的のためのもので、治療時の状況を前提とすれば何ら異常なものであったとは考えられないから、暴行と傷害に起因する失血死との間の因果関係を遮断するものではない)として、傷害致死罪の成立を認めた。¶002