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Ⅰ はじめに

2019(令和元)年12月29日に、特別背任などの罪で起訴され保釈中だったカルロス=ゴーン氏が、米国籍父子の助けを借りてプライベートジェットでレバノンに逃亡した事件は、日本の刑事司法史上最大級の不祥事のひとつであるとともに、初めてのことではないものの、日本の刑事司法制度、とりわけ、取調べや勾留に関する批判が海外からも声高に寄せられ、法務大臣がこれに応答するなどの対応に追われるきっかけともなったことで、今なお記憶に新しい1)。本稿では、同事件も契機として制定された「刑事訴訟法等の一部を改正する法律(令和5年5月17日法律第28号)」によって新たに設けられた規定のうち、被告人等の逃亡防止措置に関係する部分について(以下「本法」という)、その制定経緯および制度内容を紹介し、予想される効果や課題についても若干言及する。¶001