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事実

Ⅰ 事案の概要

本件は、被告人の行為が公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例(昭和37年東京都条例第103号。以下「本条例」という)5条1項3号の「人を著しく羞恥させ、人に不安を覚えさせるような卑わいな言動」(以下「本要件」という)に該当するか否かが争点となり、第1審と原審の判断が分かれた事案について、本要件該当性を肯定した原判決の判断を是認したものである。¶001

本条例5条1項柱書きは、正当な理由なく、「人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為」であって、各号に掲げるものをすることを禁止している。1号は、公共の場所又は公共の乗物において、「衣服その他の身に着ける物の上から又は直接に人の身体に触れること」を挙げ(以下「痴漢行為」という)、2号は、イ又はロの場所又は乗物における「人の通常衣服で隠されている下着又は身体を、写真機その他の機器を用いて撮影し、又は撮影する目的で写真機その他の機器を差し向け、若しくは設置すること」とした上で、イとして、「住居、便所、浴場、更衣室その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所」を、ロとして、「公共の場所、公共の乗物、学校、事務所、タクシーその他不特定又は多数の者が利用し、又は出入りする場所又は乗物」を挙げ(以下「盗撮行為等」という)、3号は、「前2号に掲げるもののほか、人に対し、公共の場所又は公共の乗物において、卑わいな言動をすること」を挙げている。¶002