FONT SIZE
S
M
L

1990年代末に着手された司法制度改革において、行政活動に対する司法のチェック機能の不十分さが問題とされ、2004年に行政事件訴訟法が大幅に改正された。しかし、事態は必ずしも改善されていない。多くの裁判官は、依然として、行政事件の門前払いと行政判断の原則追認を旨とする旧来の実務に囚われているように見受けられる。この原因の1つに、ヨーロッパ大陸型の法制度の下で民事・刑事の裁判官が行政事件も担当するという、戦後日本が採用した特異な裁判制度がある。大陸型の国々と同様に日本でも現行憲法の施行前日まで行政裁判所が存在していたのであるが、本書は、その設置から廃止に至るまでの経過と関係者らによる改革の試みの全体像を提示することにより、上記のような裁判制度の構造的問題を検討するための糸口を提供している。¶001