CASE
¶001A社法務部員Bは、事業部から、「窓ガラスの室内側に貼ることで、夏には窓ガラスから入る熱を大幅に抑え(遮熱)、冬には窓ガラスから逃げる熱を大幅に抑える(断熱)性能を有する画期的な透明(可視光をほぼ遮らない)窓用フィルム(以下「本件フィルム」という)を開発したが、以下の資料を根拠として同資料で結論付けられた性能を広告宣伝しても問題ないか」との相談を受けた。Bはどのような観点からこれらの資料の妥当性を検討すればよいか1)。
・資料① 本件フィルムを貼ったガラスを発泡スチロール箱(壁厚15㎝、外寸1辺90㎝の立方体)の一面に固定して大型恒温室(冷蔵庫)内に置き、箱内温度を20℃に保つためのヒーターの消費電力を測定し、その結果から本件フィルムを貼ったガラスの熱貫流率2)を算出したところ、約3.6kcal/㎡・h・℃であったとする資料。
・資料② 空気出入口を設けた発泡スチロール箱(壁厚10㎝、内寸1辺60㎝の立方体)の一面の開口部(50㎝四方)をガラスで塞ぎ、空気出入口にダクトを各1本つないで空気冷却器で空気を循環させ、キセノンランプをガラスに照射して出入口の温度差が無くなった状態(熱平衡状態)の風量から箱の取得熱量を計測したところ、本件フィルムを貼ると日射取得熱量(単位kcal/㎡)が46%削減されたとする資料。
・資料③ 大手鉄道会社従業員が作成した、新幹線の窓に本件フィルムを貼ると日射熱負荷(単位kcal/h)を56%削減できたという内容の運輸省鉄道局長賞受賞論文。
・資料④ 夏に建物屋根上に本件フィルムを貼ったガラスを取り付けた発泡スチロール箱内の温度を測定したところ、貼っていない箱に比べて平均2.1℃、最高3.2℃低下したとする資料。
・資料⑤ 大手不動産会社作成に係る、夏のビル8階の2室において、本件フィルムを窓ガラスに貼った部屋と貼らない部屋の冷房機の稼働回数を測定したところ、貼ったほうの稼働回数が3分の1程度減少したとする資料。