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事実

株式会社X(原告)は、平成25年1月頃から、「キャタピラン」との名称で「結ばない靴紐」(紐の端部を結ばなくても緩んだり解けたりすることがない靴紐をいう。以下同じ)製品を製造・販売していた。Y1(被告)は、平成28年6月、Xに対し、キャタピラン等がXとY1が共有する本件特許権を侵害しているなどと主張して、損害賠償請求訴訟(以下「前訴」という)を提起し、併せて、株式会社Y2(被告)を設立した上、「結ばない靴紐」(被告製品)を販売し始め、「結ばない靴紐」の市場においてXと競業するようになった。前訴の控訴審裁判所は、平成30年12月26日、本件特許権(Y1の共有持分権をいう)侵害の不法行為に基づく損害賠償請求は理由があるとの中間判決(以下「本件中間判決」という)を言い渡した(知財高中間判平成30・12・26判時2506=2507号164頁。Xによるキャタピラン等の製造・販売行為は、特許法73条2項にいう「別段の定」に違反するとの理由に基づく)。Xは、本件中間判決を受け、令和元年5月中旬頃から,キャタピラン等を設計変更したキャタピラン+等の製造・販売を始めた。前訴の控訴審裁判所は、令和2年11月30日、Y1の請求を一部認容し(判時2506=2507号122頁)、Xは上記判決に対して上告したが,その後、当該上告を取り下げた。XとY1は、令和3年1月頃以降、本件特許以外の問題も含めた包括的和解に向けて協議を行い、Y1は、Xに対し、「結ばない靴紐」市場からの撤退を求める等したが,最終的には合意に至らなかった。Y1は、令和3年5月7日、Xおよびその代表者である訴外Aに対し、キャタピラン+等が本件特許権を侵害すると主張して、キャタピラン+等の製造・販売等の差止め等を求める仮処分を申し立て、これに対し、Xは、同年7月30日、第1主張書面を提出した。Y1は、同年8月19日、Xの取引先10社に対して、Y1としては、キャタピラン+等は、本件特許権を侵害していると考えているなどと記載された本件通知書を送付した(以下「本件告知行為」という)。Xは、本件告知行為が,不正競争防止法2条1項21号にいう不正競争行為(信用毀損行為)および共同不法行為を構成すると主張して、Y1および株式会社Y2に対し、同行為の差止めおよび同行為により生じた損害の賠償を請求した。¶001