事実
A社(訴外)は、製油機械部品の製造・修理等を目的とする同族経営の会社であり、亡B(訴外)が創業した鉄工所が昭和41年に株式会社に法人化されたものである。亡X1(原告)は、亡Bの五男で、A社の設立当時からその株主であり、平成15年9月10日に辞任するまで、A社の取締役であった。¶001
A社は、平成12年から経営悪化に伴い銀行の管理となり再建を図っていたが、なお債務超過の状態が解消できなかったため、平成18年頃からは秋田県中小企業再生支援協議会の支援も受け入れて事業再生を行っていた。Y(被告・被控訴人)は、平成20年11月28日、亡C(訴外。亡Bの三男で、平成17年2月25日から死亡するまでA社の代表取締役であった)の後継者としてA社の代表取締役に就任したが、その頃A社はリーマンショックの影響による売上げの激減で金融機関等への債務の返済に窮していた。Yは、その対処として、亡Cへの死亡退職金を還流させて増資をするというA社の税理士が提案したスキームをとり、退職金の還流および法人税等の還付による運転資金の確保を図ることとした。このスキームに従いYは、3000万円の死亡退職金(以下「本件退職金」という)を亡Cの遺産を単独相続したYに支給することとし、同年12月24日から平成21年1月5日にかけて、A社名義の口座からY名義の口座に複数回の銀行振込によって本件退職金が送金され、これと並行してY名義の口座からA社名義の口座にA社への貸付金が振込送金された。なお、本件退職金の支給についての株主総会決議はなされていない。¶002