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工藤論文は企業結合規制における経済分析の利用方法について説明するものである。企業結合は「一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合」に禁止されるが、同市場要件は、企業結合については「こととなる場合」(蓋然性)で足りるとされるほかは、その他一部の独禁法禁止行為、たとえばカルテル等の不当な取引制限におけるものと共通する。しかしその立証はカルテル事件等におけるものとは異なる。たとえば「一定の取引分野」について、すでに実行された価格カルテルに関しては、カルテルが対象とした取引およびそれにより影響を受けた範囲を検討して、それを画定すれば足りる。これに対して、企業結合に関しては、いわゆるSSNIPテストに依拠して、潜在的なものを含めて需要者にとっての代替性を探りながら、企業結合により競争が制限されるであろう範囲を、慎重に検討しなければならない。このような市場画定を含めて、企業結合規制においては、その他の多くの独禁法禁止行為とは異なり、市場参加者の将来の行動によって競争制限効果が発生するかを立証する作業が必要となる。ここに企業結合規制の難しさが存在する。